東京・江戸川区の中学校で、理科の授業中に硫化水素が発生し、生徒5人が体調不良を訴える事故が発生しました。
2人が救急搬送されたものの命に別状はなく、現在は回復に向かっていると報じられています。
この事故は、学校教育の現場における安全管理体制や、有害物質を扱う授業における事前指導の重要性を改めて浮き彫りにしました。
本記事では、事故の詳細、安全管理の課題、硫化水素の特性、再発防止の取り組みについて解説します。

実験中に有毒ガスが発生し通報

2025年5月13日午後、江戸川区平井の区立小松川中学校での理科の授業中、突如として硫化水素が発生しました。
授業中だった実験室内には生徒が複数人おり、うち5人が気分不良を訴えました。通報により救急隊が出動し、2人が病院に搬送されました。
搬送された生徒は意識があり、いずれも軽症とみられています。
警視庁や東京消防庁が現場を調査し、発生状況や使用された薬品、実験内容について詳しい調査を行っています。
硫化水素の発生原因と実験内容の関係
現時点で、使用された薬品の組み合わせが意図せず反応し、大量の硫化水素が発生した可能性が指摘されています。
生徒たちは硫化鉄や塩酸などを用いた化学反応の観察をしていたとされ、事故との関連性が注目されています。
実験室内の一角に異臭が充満し、生徒らが急いで避難。教師が通報後、窓を開放して換気を図ったが、しばらく異臭は残った。
硫化水素の特性と教育現場でのリスク

強い毒性と爆発性を持つ硫化水素
硫化水素は、火山や温泉地など自然界にも存在する気体ですが、化学反応によっても容易に発生します。
人体に対して非常に毒性が高く、濃度によっては短時間の吸入で致命的となることもあります。

硫化水素は濃度が高くなると臭いを感じにくくなり、自覚のないまま被害が進行します。学校でもガス検知器の活用や、事前のリスク教育が必要です
- 腐卵臭を持つ無色の気体で、濃度が上がると臭いを感知できなくなる
- 微量でも頭痛、吐き気、呼吸困難を引き起こすことがある
- 高濃度では意識喪失や呼吸停止に至る可能性がある
- 爆発性があり、空気中で火花により引火する危険もある
過去の硫化水素事故と国内の動向
学校以外でも発生する硫化水素事故
硫化水素による労働災害は清掃、下水処理、工場作業など幅広い分野で報告されています。
厚生労働省のデータによると、2004年から2023年までの20年間で計68件の硫化水素事故が記録されています。
- 清掃業
- 製造業
- 建設業
この3業種で全体の8割近くを占めており、作業環境の管理が不十分なケースで事故が発生しています。
学校における化学実験の安全対策
学校教育においても、理科の授業で硫化水素やアンモニアなどのガスが発生する化学反応を扱うことがあります。
指導要領では安全対策を講じるよう求めていますが、現場では教員の専門知識や設備の充実度によって対応に差が生じています。
- 薬品管理が不十分な学校が存在する
- 非常時の避難経路や手順が周知されていない場合がある
- 教員が化学物質の取り扱いに慣れていないケースもある
今後の課題と求められる再発防止策


対策の再検討と制度的支援の強化
事故の再発を防ぐには、学校単位の努力だけでなく、教育委員会や文部科学省による制度的支援が不可欠です。
実験に用いる薬品の選定、授業時の安全マニュアル整備、教員への研修強化が必要です。
- 毒性のある薬品使用時には事前にシミュレーションを行う
- 実験中は常に換気とモニタリングを行い、必要に応じてガス検知器を配置する
- 安全管理責任者を定め、教職員全体でリスクを共有する
- 生徒にも事故時の行動指針や避難ルートを事前に周知する
保護者や地域との連携の必要性
今回の事故を受けて、保護者の間では学校の安全対策に対する関心が一層高まっています。
学校側が保護者に向けて定期的に安全説明会を開くなど、開かれた対策を進めることが信頼回復への第一歩となります。
まとめ
- 江戸川区の中学校で、理科実験中に硫化水素が発生しました。
- 生徒5人が体調不良を訴え、2人が病院に搬送されました。
- 硫化水素は無色・腐卵臭を持ち、致死性のある有毒ガスです。
- 教育現場でも厳重な安全対策が、求められています。
- 教員研修、設備強化、安全マニュアルの再整備が急務です。
- 保護者や地域との情報共有も、今後の信頼構築に重要です。