チーズの「無添加」は本当に無添加なのかを考える
市販のナチュラルチーズの中には「無添加」と表示された商品が増えています。
化学調味料や合成保存料などを使用していないことを示すこの表記は、消費者にとって安心材料になる一方で、加工助剤や製造工程に関する情報が見えづらくなるリスクもあります。
本記事では、チーズの無添加表示が実際にどのような意味を持つのかを製造過程と法的区分の観点から丁寧に解説します。
チーズを固めるために必要な工程と物質
ナチュラルチーズは、牛乳を凝固させることから始まります。
この凝固には「レンネット」と呼ばれる酵素や、クエン酸、乳酸菌などが使われます。
これらの物質はたとえ残存しなくても、製造時に添加される以上、実際には「何も加えない」というわけではありません。
・牛乳はそのままでは固まらない
・レンネットやクエン酸で、たんぱく質を変化させる
・これらは加工助剤に分類される
・表示義務がないため目に見えない
つまり「添加していない」ように見えるものでも、加工助剤という分類で表記されていないだけというケースがあるのです。
無添加の定義は製品や基準によって異なる
「無添加」と一口に言っても、その定義には明確な統一がありません。
食品表示法では、特定の添加物を使っていない場合に限り「無添加」と記載できますが、どの添加物を除いているかの基準は各企業で異なるのが実情です。
・無添加の定義は製品によって異なる
・合成添加物を使わないことが多い基準
・天然素材でも添加行為は存在する
・完全な無添加チーズはほぼ存在しない
たとえば保存料は使っていなくても、pH調整剤など別の用途で添加物が使われている場合もあります。
さらに、製造時に不可欠な凝固剤などが「添加」とみなされていない場合、消費者には見えにくい添加行為が含まれていることになります。
家庭で作る場合も実質的には「添加」している
ヨーグルトやカッテージチーズを家庭で手作りする際、多くの人は牛乳にレモン汁やお酢を加えます。
これらの酸は、乳たんぱく質を変性させて凝固させるためのもので、家庭レベルでも明確な「添加」行為となっています。
・レモン汁や酢も添加行為に該当
・素材が自然でも作用を加えている
・変化を意図した操作は添加の一種
・自然＝無添加ではないという現実
このように、たとえ家庭であっても自然素材を使った加工は「何も加えていない」わけではないのです。
言い換えれば、「無添加」と「自然」は必ずしも一致しません。
健康志向と「無添加」信仰のズレ
無添加チーズの人気は、健康への意識が高まったことと無関係ではありません。
保存料や合成調味料に不安を抱く人が増える中で、「無添加」と表記された食品は選ばれやすくなっています。
しかし、見た目の表記だけで本当に安全かどうかを判断するのは難しいといえます。
・無添加食品が人気なのは健康志向が背景
・合成添加物への不安が選択基準になる
・しかし無添加＝安全とは限らない
・製造工程まで知ることが大切
とくに加工助剤や酵素は、表示義務がなくても製品の品質や保存性に大きく関わっています。
これらを一律に避けることが果たして正しい選択なのかは慎重に考えるべきです。
表記の限界と消費者としての視点
製品の表示は法令に準じて行われていますが、「無添加」という言葉がもたらす安心感が、製造実態への理解を妨げる可能性もあります。
チーズの製造では、凝固や発酵を進めるための多様な働きかけがあり、それが食品の安全性や味を支えています。
・無添加は相対的な概念である
・製造工程を見なければ誤解を招く
・必要な素材まで見落とすリスクがある
・納得できる選択には情報が欠かせない
消費者が信頼して製品を選ぶには、単に表示を確認するだけでなく、製造背景にある科学的なプロセスや制度の仕組みを知ることが求められます。
まとめ
・ナチュラルチーズでも、製造に必要な物質は加えられています。
・「無添加」とは、特定の添加物を使っていないという意味です。
・加工助剤などは表示義務がなく、見えにくい存在です。
・家庭での手作りでも、実質的には添加が行われています。
・「無添加＝安全」ではなく、製造工程の理解が重要です。
・納得できる選択には、表示以上の知識が求められます。
