羅臼岳ヒグマ事件 友人の必死の抵抗も及ばず男性死亡

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2025年8月14日、北海道知床半島の羅臼岳で登山中の20代男性がヒグマに襲われ、行方不明となった。翌15日、現場付近で遺体が発見され、男性の死亡が確認された。


同行していた友人が素手で救出を試みるもクマは離れず、事件は知床の登山安全対策に大きな衝撃を与えている。男性の父親は「野生動物に襲われて死んでしまったことが悲しい」と胸の内を明かした。

目次

事件の概要

14日午前11時頃、北海道斜里町の羅臼岳(標高1661m)の標高550m付近で、登山中の20代男性が突如現れたヒグマに襲われた。



約200m後方を歩いていた友人は「助けて」という声を聞き駆け寄ったが、男性は太ももから出血しながらクマに茂みの中へ引きずられていた。友人は素手で殴って救出を試み、自らの腕が血だらけになるほどだったが、クマは離さず姿を消した。


友人は身の危険を感じ、救助を呼ぶため登山道に戻って通報。15日午前5時30分から再開された捜索で、現場周辺に血痕や引きずられた痕跡、衣類や靴、所持品が見つかった。そして午後、遺体が発見され死亡が確認された。

項目詳細
発生日時2025年8月14日 午前11時頃
場所羅臼岳(標高550m付近)
被害者20代男性(死亡確認)
友人の行動素手で殴打し救出試みるも失敗
発見物血痕付きシャツ、財布、時計、靴、破れたズボン
捜索体制警察・ハンター・警察犬(18人)
クマの状況親子3頭目撃、親グマ1頭駆除

捜索と駆除の経過

捜索は安全確保のため一時中断されたが、翌15日朝に再開。午後1時頃、現場近くで親子3頭のクマを発見し、ハンターが5発発砲して親グマ1頭を駆除。子グマ2頭も後に駆除されたが、襲撃個体との関連は不明。道総研がDNA分析で関連性を調べる予定だ。

時間主な出来事
8月14日 午前11時男性がヒグマに襲撃され行方不明
午後安全確保のため捜索中断
8月15日 午前5時30分18人体制で捜索再開
午後遺体発見、死亡確認
同日午後1時頃親グマ1頭、子グマ2頭を駆除

父親のコメントと家族の思い

男性の父親は警察の取材に対し、「野生動物に襲われて死んでしまったことが悲しい」と短くも重い言葉を残した。突然の悲劇に家族や知人は深い悲しみに包まれ、現場周辺では関係者が献花を行う姿も見られた。

背景と警告

羅臼岳は知床半島の中心部に位置し、世界自然遺産に登録された自然豊かな地域だが、ヒグマの生息密度が極めて高い。


近年は人馴れクマが増加し、8月10日には登山者に3〜4mまで接近、12日にはベアスプレーを使っても追尾する事案が発生。知床財団は7月から注意喚起を強化し、事件当日もクマ警報を発令していた。

時期クマの行動
7月人馴れクマへの注意喚起
8月10日登山者に3〜4m接近
8月12日ベアスプレー使用も追尾
8月14日クマ警報発令、襲撃発生

類似事例との比較

北海道では1962年以降、クマによる人的被害は160件(死者60人、負傷122人)が記録されているが、登山中の襲撃は6件のみ。今回の事件は、被害者が引きずられた点から捕食行動の可能性があり、防御的な攻撃とは性質が異なるとされる。観光客の増加による人馴れと行動変化が、被害リスクを高めている。

専門家の見解と提言

北海道大学の野生動物学専門家は「人馴れクマは予測不能な攻撃をする」と警鐘を鳴らす。知床財団は団体行動やクマ鈴・ベアスプレーの携行を推奨し、北海道クマ対策室は最新の目撃情報の事前確認を呼び掛けている。ベアスプレー義務化や登山規制の強化を求める声も高まっている。

今後の見通し・まとめ

今回の事件は、知床の登山安全対策の抜本的な見直しを迫るものとなった。駆除されたクマが襲撃個体かは不明で、道総研によるDNA分析の結果が今後の対応方針に影響を与える可能性がある。観光と野生動物保護の両立をどう実現するか、地域社会にとって大きな課題となっている。

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