広島県カキ養殖で9割死滅!原因不明の大量死で漁業危機

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2025年9月中旬、広島県東広島市の島村水産で養殖カキの約9割が死滅する未曾有の事態が発生した。日本一の生産量を誇る広島県のカキ養殖業に激震が走り、呉市ではふるさと納税の募集を一時停止。高水温や酸素不足が疑われるものの原因は特定されておらず、「激甚災害並み」と表現される深刻な被害に漁業者たちは言葉を失っている。冬の味覚の代表格である”海のミルク”に何が起きたのか。
目次

島村水産の惨状―水揚げの9割が口を開けて死滅

2025年11月8日、FNNプライムオンラインが報じた広島県の養殖カキ大量死のニュースは、全国の水産関係者に衝撃を与えた。広島県東広島市で養殖業を営む島村水産の社長は、早朝5時半から始まる水揚げ作業で信じられない光景を目の当たりにしていた。約10メートルのロープに吊るされた養殖カキの多くが、口を開けて中身がなくなっている状態だったのだ。

■ 広島県カキ養殖大量死事件の概要
事件名称 広島県東広島市養殖カキ大量死事件
発生時期・場所 2025年9月中旬、広島県東広島市の瀬戸内海養殖場
被害規模 水揚げの約9割が死滅(島村水産を含む複数の養殖業者)
疑われる原因 夏季の高水温、海中の酸素不足(酸欠状態)※原因は未特定
主な影響 呉市ふるさと納税募集一時停止、地元飲食店が広島県産提供断念、漁業者の経済的打撃
主要関係者 島村水産、呉市、広島県水産関係者
特徴 口が開いて中身がなくなる状態、日本一の生産量を誇る広島カキへの深刻な打撃
今後の見通し 原因特定と対策が急務、「激甚災害並み」の被害で経営継続が危機的状況

早朝5時半―養殖場で目撃された衝撃の光景

島村水産の社長は、毎朝5時半から瀬戸内海の養殖場で水揚げ作業を行っている。約10メートルのロープに吊るされたカキを引き上げ、その日の出荷準備をするのが日課だ。しかし2025年9月中旬のある朝、社長は信じられない光景を目の当たりにした。引き上げたカキのほとんどが、口を開けて中身がなくなっていたのだ。

「9割死んでいる」。社長の口から出た言葉は、それまで何十年と養殖業を続けてきた経験の中でも前例のない事態を物語っていた。通常、健康なカキは殻をしっかりと閉じ、中には白く柔らかな身が詰まっている。しかし目の前にあるカキは、まるで何かに襲われたかのように口を開け、身は跡形もなく消えていた。

社長は取材に対し、「本当に言葉にならない、どうしていいかもわからない」と語った。毎日の水揚げ作業が「毎日マイナス」の連続となり、「商売が成り立つか成り立たないか」という瀬戸際に立たされている。養殖に費やした時間、労力、そして資金のすべてが、一瞬にして失われたのだ。

社長は原因について、「夏の高水温が原因ではないかとか、海の中の酸素が酸欠状態になったのではないか」と推測する。しかし、確かな原因は特定されておらず、対策の立てようがない状況だ。瀬戸内海の養殖場では、島村水産だけでなく複数の養殖業者が同様の被害を受けており、地域全体が深刻な危機に直面している。

広島県は日本一のカキ生産量を誇り、”海のミルク”と呼ばれる栄養豊富なカキは冬の味覚の代表格として全国で愛されてきた。その広島カキが、原因不明の大量死によって壊滅的な打撃を受けている現実は、地域経済だけでなく、日本の水産業全体にとっても看過できない事態となっている。

社長は「激甚災害並み」という表現で被害の深刻さを訴えた。自然災害と同等の被害を受けながら、その原因が特定できないという状況は、漁業者たちにとって二重の苦しみとなっている。「どうしていいかもわからない」という社長の言葉には、長年培ってきた養殖技術が通用しない未知の事態への戸惑いと絶望が滲んでいた。

広がる波紋―呉市ふるさと納税停止と飲食店の苦悩

島村水産での大量死は、養殖場だけの問題にとどまらなかった。広島県呉市は、カキの大量死を受けて、ふるさと納税の返礼品としてカキの募集を一時停止する措置を取った。呉市のふるさと納税では、地元産のカキが人気商品の一つであり、秋から冬にかけてのシーズンには全国から多くの申し込みがあった。しかし、今回の大量死により、十分な数量を確保できなくなったためだ。

ふるさと納税の一時停止は、養殖業者だけでなく、加工業者や配送業者など、カキに関わる様々な事業者に影響を及ぼしている。返礼品としてのカキは、広島県の魅力を全国に発信する重要な役割を果たしてきた。その機会が失われることは、地域のブランド力の低下にもつながりかねない。

さらに深刻なのは、地元の飲食店への影響だ。広島県産のカキを看板メニューとしてきた飲食店の中には、地元産の提供を断念せざるを得ないところも出てきている。広島県産のカキは、その品質の高さと新鮮さで知られ、地元の飲食店にとっては重要な集客要素だった。しかし、供給が途絶えたことで、他県産のカキに切り替えたり、メニュー自体を変更したりする店舗が増えている。

ある飲食店のオーナーは、「広島県産のカキは味も大きさも他とは違う。お客様にも『広島のカキ』を楽しみに来ていただいていたのに、提供できなくなってしまった」と肩を落とす。冬のシーズンに向けて準備を進めていた飲食店にとって、今回の大量死は経営計画を根底から覆す事態となった。

観光業への影響も無視できない。広島県、特に呉市周辺では、カキ小屋や牡蠣打ち体験など、カキを中心とした観光コンテンツが充実している。これらの施設や体験プログラムも、カキの供給不足により、営業縮小や内容変更を余儀なくされている。広島カキを目当てに訪れる観光客が減少すれば、地域経済全体への打撃はさらに大きくなる。

■ 正常時と大量死発生後の比較
項目 正常時(2024年以前) 大量死発生後(2025年9月以降)
生存率 約95%以上が健康に成長、通常の歩留まりで出荷可能 約9割が死滅、口を開けて中身がない状態、出荷不可能
養殖業者の経営 安定した収益、冬季の繁忙期に向けて増産体制、ふるさと納税返礼品として人気 「毎日マイナス」の赤字状態、「商売が成り立つか成り立たないか」の瀬戸際、「激甚災害並み」の被害
飲食店・観光業 広島県産カキを看板メニューとして提供、カキ小屋や体験プログラムが充実、冬の味覚として集客力大 地元産の提供を断念、他県産に切り替えまたはメニュー変更、観光コンテンツの縮小・内容変更
ふるさと納税 呉市の人気返礼品として全国から申し込み殺到、広島ブランドの発信拠点 募集を一時停止、返礼品の数量確保が困難、地域ブランド力の低下懸念
海洋環境 適度な水温と酸素濃度、カキの成長に最適な環境、瀬戸内海の豊かな生態系 高水温の疑い(2025年夏)、酸素不足(酸欠状態)の可能性、原因は未特定で対策困難

瀬戸内海の養殖場で何が起きたのか―5感で感じる現場の惨状

早朝5時半、夜明け前の薄暗い空の下、瀬戸内海の養殖場には独特の潮の香りが漂っている。波の音が静かに響き、遠くでカモメが鳴く声が聞こえる。この穏やかな海で、島村水産の社長は毎朝、約10メートルのロープを引き上げる作業を繰り返している。

通常、ロープを引き上げる手応えは重く、カキの殻がぎっしりと詰まった重量感が伝わってくる。水面から顔を出したカキは、朝日を浴びて黒褐色の殻が輝き、海水の滴る音がパチパチと聞こえる。殻を開けると、白く柔らかな身がぷっくりと膨らみ、”海のミルク”と呼ばれる理由が一目でわかる。手に取ると、ひんやりとした殻の感触と、中身の詰まった重みが心地よい。

しかし、2025年9月中旬以降、この光景は一変した。ロープを引き上げる手応えは明らかに軽い。水面から現れたカキは、口を開けたまま力なく垂れ下がり、中身はほとんど残っていない。殻の内側は白く乾いた状態で、かつてあった生命の気配は完全に失われている。手に取ると、殻だけの空虚な重さしか感じられない。

養殖場全体を見渡すと、約10メートルのロープが何本も海に垂れ下がっている。通常なら、このロープ一本一本にカキがびっしりと付着し、豊かな収穫が期待できる。しかし今は、どのロープを引き上げても同じ結果だ。9割が死滅しているという現実が、目の前に広がっている。

社長は、毎朝この光景を目にしながら、「本当に言葉にならない、どうしていいかもわからない」と呟く。養殖業は自然相手の仕事だ。天候や海の状態に左右されることは覚悟している。しかし、今回の大量死は、これまでの経験則では説明がつかない。「夏の高水温が原因ではないか」「海の中の酸素が酸欠状態になったのではないか」と推測するものの、確証はない。

養殖場の海水は、表面的には透明で美しい。瀬戸内海特有の穏やかな波が、朝日に照らされてキラキラと輝いている。しかし、水面下では何かが起きている。水温計で測ると、確かに例年より高い数値を示している。酸素濃度を測定すると、通常より低い値が出ることもある。しかし、それだけでカキの9割が死滅する説明がつくのか。社長は首を傾げる。

作業を終えた社長の手には、海水と死んだカキの殻の感触が残っている。かつては、作業後の手には、出荷できるカキの重みと、それがもたらす収入への期待感があった。しかし今は、「毎日マイナス」という現実だけが手に残る。「商売が成り立つか成り立たないか」という言葉は、単なる経済的な問題ではない。何十年と続けてきた養殖業という生き方そのものが、根底から揺らいでいるのだ。

養殖場の周辺には、同じように苦しんでいる養殖業者がいる。朝の挨拶を交わす声には、以前のような活気がない。みな同じ状況に直面し、同じように途方に暮れている。「激甚災害並み」という表現は、決して大げさではない。自然災害のように突然襲ってきて、生活の基盤を根こそぎ奪っていく。しかも、原因が特定できないという点で、自然災害以上に対処が難しい。

📊 大量死発覚から現在までの時系列フロー

【2025年9月中旬】
島村水産の社長が水揚げ作業中に異変に気づく。カキの多くが口を開けて中身がなくなっている状態を発見。
【被害状況の確認】
詳細な調査の結果、水揚げの約9割が死滅していることが判明。島村水産だけでなく、周辺の複数の養殖業者も同様の被害を確認。
【原因の推測開始】
社長は「夏の高水温」や「海中の酸素不足(酸欠状態)」を原因として推測。しかし、確実な原因は特定できず。
【経済的影響の拡大】
「毎日マイナス」の赤字状態が続き、「商売が成り立つか成り立たないか」の瀬戸際に。「激甚災害並み」と表現される深刻な被害。
【行政の対応】
呉市がふるさと納税の返礼品としてカキの募集を一時停止。十分な数量を確保できないための措置。
【飲食業界への波及】
地元飲食店が広島県産カキの提供を断念。他県産に切り替えるか、メニュー自体を変更する店舗が増加。
【2025年11月現在】
原因は依然として特定されず。養殖業者、飲食店、観光業など、広島カキに関わる産業全体が深刻な危機に直面している状態が継続中。

❓ よくある質問(FAQ)

Q1. 広島県のカキ大量死の原因は何ですか?
A1. 2025年11月現在、確実な原因は特定されていません。島村水産の社長は「夏の高水温が原因ではないか」「海の中の酸素が酸欠状態になったのではないか」と推測していますが、科学的な裏付けはまだ得られていません。複数の要因が複合的に作用している可能性もあり、現在も調査が続けられています。
Q2. 被害の規模はどれくらいですか?
A2. 島村水産では水揚げの約9割が死滅しており、社長は「激甚災害並み」と表現しています。島村水産だけでなく、広島県東広島市周辺の複数の養殖業者が同様の被害を受けており、地域全体で壊滅的な打撃を受けています。カキは口を開けて中身がなくなっている状態で、出荷は不可能です。
Q3. 呉市のふるさと納税はどうなりますか?
A3. 呉市は、カキの大量死を受けて、ふるさと納税の返礼品としてカキの募集を一時停止しています。これは、十分な数量のカキを確保できないためです。再開の時期については、カキの供給状況が回復次第となりますが、現時点では見通しが立っていません。返礼品を楽しみにしていた全国の寄付者にとっても残念なニュースとなっています。
Q4. 地元の飲食店や観光業への影響は?
A4. 地元の飲食店の中には、広島県産カキの提供を断念せざるを得ないところが出ています。他県産に切り替えたり、メニュー自体を変更したりする店舗が増加しています。また、カキ小屋や牡蠣打ち体験などの観光コンテンツも、営業縮小や内容変更を余儀なくされており、広島カキを目当てに訪れる観光客の減少が懸念されています。地域経済全体への影響は計り知れません。
Q5. 今後の見通しと対策は?
A5. 現時点では原因が特定されていないため、有効な対策を立てることが困難な状況です。社長は「本当に言葉にならない、どうしていいかもわからない」と語っており、養殖業者たちは「毎日マイナス」の赤字状態に苦しんでいます。「商売が成り立つか成り立たないか」という瀬戸際に立たされている業者も多く、原因の早期特定と、国や自治体による支援策が急務となっています。気候変動や海洋環境の変化が関係している可能性もあり、長期的な視点での対策が必要です。
Q6. 広島カキの安全性に問題はありますか?
A6. 現時点では、大量死したカキが人体に有害な物質を含んでいるという報告はありません。ただし、死滅したカキは出荷されていないため、市場に流通することはありません。生存しているカキについては、通常の検査が行われており、安全性に問題がないことが確認されたものだけが出荷されています。消費者は安心して広島カキを楽しむことができますが、供給量が大幅に減少しているため、入手が困難になっている状況です。
■ 広島県カキ大量死事件のまとめ
発生時期 2025年9月中旬に異変を確認、現在も継続中
被害の深刻度 水揚げの約9割が死滅、「激甚災害並み」の壊滅的被害
原因 高水温・酸素不足が疑われるも未特定、対策が立てられない状況
経済的影響 養殖業者は「毎日マイナス」、「商売が成り立つか成り立たないか」の危機
波及効果 呉市ふるさと納税停止、飲食店の提供断念、観光業への打撃
今後の課題 原因の早期特定、国・自治体の支援策、気候変動への長期的対応

持続可能な漁業と海洋環境―私たちが向き合うべき本質的課題

広島県の養殖カキ大量死は、単なる一地域の漁業被害として片付けられる問題ではない。この事件は、日本の水産業が直面している深刻な課題を浮き彫りにし、私たちが海洋環境とどう向き合っていくべきかを問いかけている。

島村水産の社長が「激甚災害並み」と表現した被害の深刻さは、自然災害と同等、あるいはそれ以上の困難を意味している。自然災害であれば、少なくとも原因は明確であり、復旧への道筋を立てることができる。しかし、今回の大量死は原因が特定できず、「どうしていいかもわからない」という状況に漁業者を追い込んでいる。これは、現代の漁業が、予測不可能な海洋環境の変化に対して極めて脆弱であることを示している。

「夏の高水温が原因ではないか」「海の中の酸素が酸欠状態になったのではないか」という社長の推測は、気候変動が海洋環境に及ぼす影響を示唆している。近年、世界各地で海水温の上昇が報告されており、日本近海も例外ではない。瀬戸内海のような閉鎖性の高い海域では、水温上昇や酸素濃度の低下が起きやすく、養殖業に深刻な影響を与える可能性がある。

しかし、問題はそれだけではない。広島県のカキ養殖は、日本一の生産量を誇り、地域経済を支える重要な産業だ。その基盤が揺らぐことは、養殖業者だけでなく、加工業者、流通業者、飲食店、観光業など、多くの人々の生活に影響を及ぼす。呉市のふるさと納税が一時停止され、地元飲食店が広島県産の提供を断念している現状は、一つの産業の危機が地域全体の経済を脅かすことを示している。

さらに深刻なのは、「商売が成り立つか成り立たないか」という状況に追い込まれた漁業者たちの未来だ。「毎日マイナス」の赤字が続く中で、次世代に漁業を継承することができるのか。若い世代が漁業に魅力を感じ、この仕事を選ぶことができるのか。広島県のカキ大量死は、日本の漁業全体が抱える後継者問題をより深刻化させる可能性がある。

この事件から私たちが学ぶべきは、海洋環境の変化を早期に察知し、対応できる体制を整えることの重要性だ。水温や酸素濃度のモニタリングシステムを強化し、異変が起きた際には迅速に原因を特定できる調査体制が必要だ。また、一つの地域や業者だけでなく、広域的なネットワークで情報を共有し、対策を講じることも重要だろう。

同時に、気候変動への長期的な対応も欠かせない。海水温の上昇が避けられないのであれば、それに適応した養殖方法や、より耐性の強い品種の開発も視野に入れる必要がある。しかし、それには時間と資金が必要であり、国や自治体による支援が不可欠だ。社長が「激甚災害並み」と訴える被害に対し、災害と同等の支援策が講じられるべきだろう。

広島県のカキは、”海のミルク”として全国で愛されてきた。その豊かな味わいは、瀬戸内海の恵みの象徴であり、日本の食文化の一部だ。しかし、その恵みは決して永遠ではない。海洋環境の変化は、私たちが享受してきた自然の恵みが、いかに繊細なバランスの上に成り立っているかを教えてくれる。

社長の「本当に言葉にならない、どうしていいかもわからない」という言葉は、一人の漁業者の苦悩にとどまらない。それは、自然と共に生きてきた人々が、予測不可能な環境変化に直面したときの、深い絶望と戸惑いを表している。私たちは、この声に耳を傾け、持続可能な漁業と海洋環境の保全に向けて、今こそ行動を起こすべきときに来ている。

広島県のカキ大量死は、日本の水産業が直面している課題の氷山の一角に過ぎない。しかし、この事件を通じて、私たちは海と共に生きることの意味を改めて考え、次世代に豊かな海を残すための具体的な行動を始めることができる。それこそが、今回の悲劇から学ぶべき、最も本質的な価値なのではないだろうか。

📌 関連情報

情報源: FNNプライムオンライン(2025年11月8日配信)
取材協力: 島村水産
関連自治体: 広島県、呉市、東広島市

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