【新発田市】猟友会の80代男性がクマに襲われる|顔をかまれながらも自ら駆除

都市上空に伸びる道を歩くクマと「プラネット・チェックリスト」の文字イラスト
新潟県新発田市で12日午前、クマの出没通報を受けて出動した猟友会の80代男性が、農道でクマに襲われ負傷する事件が発生した。
男性は顔や足に傷を負ったものの意識はあり、襲撃直後に持っていた銃でクマを駆除したという。

高齢の猟友会員が現場で命を守り抜いた一方、県内で相次ぐクマ出没の深刻さを改めて浮き彫りにする出来事となった。

事件の概要|新発田市の農道で発生

警察と消防によると、襲撃があったのは新発田市二本木の農道付近。
12日午前9時半ごろ、市の要請を受けて現地に出動していた猟友会の男性が、突然現れたクマに襲われた。

通報によると、男性は「顔をかまれた」と話しており、右顔面の口角付近や足に傷を負った。 その後、救急車で病院に搬送されたが、意識ははっきりしているという。

襲撃の直前には「クマのフンや柿の木にひっかいた跡がある」との通報があり、 市と警察、猟友会が合同で捜索を行っていた最中の出来事だった。 現場は田畑が広がる地域で、近年クマの目撃が相次いでいる。

襲撃の経緯|見回り中に突然の遭遇

午前9時過ぎ、新発田市押廻地区でクマの痕跡が発見されたため、 猟友会と警察が周辺の捜索を開始した。

その後、押廻でクマを一度目撃したものの見失い、付近を警戒中に、 80代の男性が二本木地区の農道で不意にクマと遭遇したという。

男性は複数の猟友会員と行動していたが、襲撃を受けたのは彼一人だった。 突然の突進により倒され、顔をかまれるなどの重傷を負いながらも、 冷静に銃を構え、1.5メートルほどのメスグマを駆除した。

命を奪われかねない状況の中、熟練の判断と冷静な行動が命を守る結果となった。

駆除されたクマの特徴と現場の状況

襲撃したクマは体長約1.5メートルのメス。 付近の果樹園では柿の実を狙う痕跡が複数見つかっており、 冬眠前の栄養補給のために人里近くへ出てきた可能性が高い。

襲撃現場は住宅地にも比較的近く、通学路や農作業ルートとも重なる。 一歩間違えばさらなる被害につながっていた恐れもあり、 市は当面の間、付近住民に外出の際の注意を呼びかけている。

近隣では過去1週間以内にもクマの足跡が確認されており、 「今年は柿が豊作で山に餌が残りにくい」「人慣れした個体が増えている」など、 複数の要因が重なっているとみられる。

男性の容体と地域の対応

襲われた男性はすぐに救急搬送され、命に別状はないとみられている。
現場で応急処置を受けた際も意識があり、「大丈夫だ」と周囲に声をかけていたという。

市や警察は、現場周辺での二次被害防止のために巡回を強化し、 地域住民に対して「不用意に山へ近づかない」「柿の実などを放置しない」などの注意を呼びかけている。

新発田市役所では12日午後にも記者会見を予定しており、 今後の対応や安全確保策について説明する見通しだ。

急増するクマ被害|新潟県内でも深刻化

新潟県では2025年秋以降、クマの出没件数が急増している。
環境省によると、10月だけで100件を超える目撃通報があり、 被害防止のために各自治体が猟友会へ出動を要請するケースが相次いでいる。

今年は山のドングリなどの木の実が不作で、餌を求めて里へ下りるクマが増えているという。 また高齢化が進む猟友会の負担も重く、今回のように80代の会員が第一線で活動する例も少なくない。

新潟県では昨年から「クマ対策緊急プロジェクト」を実施し、 住民向け講習や電気柵の補助などを拡充しているが、被害の根絶には至っていない。

高齢化する猟友会と現場の現実

今回の襲撃で注目されたのは、80代という高齢の猟友会員が最前線で出動していたことだ。

全国の猟友会では、会員の平均年齢が60代後半に達しており、 人員不足と高齢化の影響で出動要請への対応が難しくなっている。

「若い担い手が育たない」「危険に見合った報酬ではない」といった課題も指摘されており、 今回のような命懸けの活動に依存する体制の見直しが求められている。

地域を守るために立ち上がる高齢ハンターたちの姿勢は称賛される一方で、 安全管理体制や支援体制の充実が急務となっている。

まとめ|“命を守る行動”と地域の課題

クマに顔をかまれながらも、自らの手で危険を制した80代の猟友会員。 その冷静な判断と勇気ある行動は、地域の安全を守るための象徴的な出来事となった。

しかし同時に、頻発するクマ被害と高齢化する地域防衛体制という現実が浮き彫りになった。 被害を未然に防ぐためには、猟友会員の支援だけでなく、住民一人ひとりの意識改革が求められている。

人と野生動物の共存をどう実現するのか──。 新発田での一件は、全国の地域社会にとっても無視できない警鐘といえるだろう。

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