相続税対策 不動産 活用方法|賃貸経営で評価額を下げる仕組み

青い背景に地球のシルエットと「PLANET CHECKLIST 2025」の文字が描かれたロゴ画像

相続税路線価が4年連続で上昇する中、不動産を活用した相続税対策が注目されています。更地のまま保有するよりも、賃貸アパートやマンションを建てて賃貸経営を行う方が、相続税の評価額を大幅に下げることができます。貸家建付地として評価されることで、土地の評価額は約20%減額され、建物も貸家として約30%減額されます。さらに小規模宅地等の特例を組み合わせれば、最大50%の減額も可能です。本記事では、不動産を活用した相続税対策の仕組み、具体的な評価額減額の計算方法、賃貸経営のメリットとリスク、注意すべきポイントについて詳しく解説します。

不動産を活用した相続税対策の基本

不動産を活用した相続税対策は、土地や建物の評価額を下げることで相続税の負担を軽減する方法です。

相続税における不動産の評価は、土地については路線価方式または倍率方式、建物については固定資産税評価額を基準に計算されます。ただし、その不動産をどのように利用しているかによって、評価額が変わります。

更地のまま保有している場合、土地は路線価の100%で評価されます。しかし、その土地に賃貸アパートやマンションを建てて賃貸経営を行うと、「貸家建付地」として評価され、評価額が減額されます。

貸家建付地の評価額は、以下の計算式で求められます。

貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借地権割合は地域によって異なりますが、都市部では60%から70%が一般的です。借家権割合は全国一律30%です。賃貸割合は、実際に賃貸している部屋の割合です。

例えば、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%の場合、貸家建付地の評価額は自用地評価額の82%(1-0.6×0.3×1.0=0.82)となり、18%減額されます。

📌 不動産活用の相続税対策の要点

  • 更地よりも賃貸経営の方が評価額が低くなる
  • 貸家建付地として土地の評価額が約18%から21%減額
  • 貸家として建物の評価額が約30%減額
  • 小規模宅地等の特例との併用で最大50%減額
  • 賃貸経営には空室リスクや管理の手間がある

貸家建付地による評価額減額の具体例

貸家建付地による評価額減額の効果を具体的な数字で見てみましょう。

ケース1として、千葉県市川市で路線価1平方メートルあたり101万円、土地面積300平方メートルの土地を持っている場合を考えます。

更地のままの場合、土地の評価額は3億300万円です。法定相続人が2人の場合、基礎控除額4200万円を引いた2億6100万円が課税対象となり、相続税額は約7000万円になります。

この土地に賃貸アパートを建てた場合、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%とすると、貸家建付地の評価額は2億4846万円(3億300万円×0.82)となり、約5454万円減額されます。

さらに、建物の評価額は固定資産税評価額で計算されます。建築費1億円のアパートの場合、固定資産税評価額は約5000万円から6000万円程度です。これを貸家として評価すると、約30%減額され、評価額は3500万円から4200万円程度になります。

土地と建物を合わせた相続財産は約2億8000万円から2億9000万円となり、課税対象額は約2億3800万円から2億4800万円です。相続税額は約6200万円から6500万円となり、更地の場合と比べて約500万円から800万円の節税効果があります。

さらに、貸付事業用宅地等の特例を併用すれば、200平方メートルまで50%減額されるため、より大きな節税効果が期待できます。

小規模宅地等の特例との併用方法

不動産を賃貸経営に活用する場合、小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地等」を併用できます。

貸付事業用宅地等の特例では、200平方メートルまで50%減額されます。貸家建付地の減額と併用できるため、非常に強力な節税効果があります。

具体的な計算は複雑ですが、基本的な流れは以下の通りです。

第一段階として、貸家建付地の評価額を計算します。自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)で求めます。

第二段階として、貸付事業用宅地等の特例を適用します。貸家建付地の評価額に対して、200平方メートルまで50%減額します。

例えば、300平方メートルの土地で路線価1平方メートルあたり101万円の場合を考えます。

自用地評価額は3億300万円です。これを貸家建付地として評価すると2億4846万円になります。

さらに貸付事業用宅地等の特例を適用すると、200平方メートル分は半額になります。計算は複雑ですが、おおむね200平方メートル分の評価額(約1億6564万円)の50%が減額されるため、約8282万円の減額となり、最終的な評価額は約1億6564万円となります。

ただし、貸付事業用宅地等の特例を適用するには、相続開始前3年以上継続して貸付事業を行っている必要があります。相続直前に慌てて賃貸経営を始めても特例は適用されません。

また、居住用宅地等の特例と併用する場合は、限度面積の調整が必要です。税理士に相談して最適な組み合わせを選びましょう。

賃貸アパート経営のメリットとリスク

相続税対策として賃貸アパート経営を行うメリットは大きいですが、リスクも存在します。

メリットの第一は、相続税評価額を大幅に下げられることです。前述の通り、貸家建付地と貸家の評価減により、数百万円から数千万円の節税効果が期待できます。

メリットの第二は、家賃収入が得られることです。相続税対策だけでなく、老後の安定収入源となります。千葉県市川市の不動産関係者は「景気が良くて都心部の戸建てやマンションの値段が上がると、それに手が届かない層が集まる」と指摘しており、賃貸需要は一定程度見込めます。

メリットの第三は、土地を手放さずに済むことです。相続税が払えずに土地を売却する代わりに、賃貸経営によって評価額を下げることで、土地を維持できます。

一方、リスクの第一は、空室リスクです。賃貸割合が下がると評価額の減額効果も下がります。さらに、空室が続くと家賃収入が得られず、固定資産税や管理費の支払いが負担になります。

リスクの第二は、建築費の負担です。アパートやマンションを建てるには数千万円から数億円の建築費がかかります。借入金で建てる場合、返済負担が家計を圧迫する可能性があります。

リスクの第三は、経年劣化と修繕費です。建物は年月とともに劣化し、定期的な修繕が必要です。大規模修繕には数百万円から数千万円かかります。

リスクの第四は、賃貸経営の手間です。入居者の募集、家賃の回収、トラブル対応など、管理業務が発生します。管理会社に委託する場合、家賃収入の5%から10%程度の管理費がかかります。

賃貸経営を成功させるためのポイント

賃貸経営を相続税対策として成功させるには、以下のポイントが重要です。

第一に、立地選びです。賃貸需要が見込める立地でなければ、空室リスクが高まります。駅から徒歩10分以内、周辺に大学や企業がある、生活利便施設が充実している、などの条件を満たす立地を選びます。

千葉県市川市の例では、駅周辺の再開発が進み、マンション建設や商業施設の開業が相次いでいます。こうした開発が進むエリアは賃貸需要が期待できます。

第二に、適切な間取りと家賃設定です。ターゲットとなる入居者層(単身者、ファミリー、高齢者など)を明確にし、そのニーズに合った間取りと家賃を設定します。周辺の賃貸相場を調査し、競争力のある条件を提示することが重要です。

第三に、建築コストの管理です。過剰な設備投資は避け、コストパフォーマンスの良い建物を建てます。複数の建築会社から見積もりを取り、比較検討します。

第四に、長期的な収支計画を立てることです。家賃収入、固定資産税、管理費、修繕費、ローン返済などを含めた収支計画を作成し、長期的に黒字を維持できるか確認します。

第五に、管理体制の整備です。自主管理は手間がかかるため、信頼できる管理会社に委託することを検討します。管理会社の実績や評判を調査し、適切な会社を選びます。

第六に、相続税対策としての効果を定期的に確認することです。税制改正や地価の変動により、評価額や相続税額は変わります。定期的に税理士に相談し、計画を見直します。

借入金を活用した相続税対策の注意点

賃貸アパートやマンションを建てる際、多くの場合は金融機関から借入れを行います。借入金には相続税対策上のメリットとデメリットがあります。

メリットは、借入金が相続財産からマイナスされることです。例えば、1億円の借入金で賃貸アパートを建てた場合、相続時には借入金残高が債務として相続財産から控除されます。

ただし、建物の評価額は固定資産税評価額(建築費の約50%から60%)で計算されるため、借入金1億円に対して建物の評価額は5000万円から6000万円程度です。借入金の方が大きいため、ネットでは相続財産が減少します。

デメリットは、返済負担が発生することです。家賃収入が想定より少ない場合や、空室が続く場合、返済が困難になる可能性があります。

また、2025年現在、金利が上昇傾向にあります。変動金利で借り入れた場合、金利上昇により返済額が増加するリスクがあります。固定金利を選択するか、変動金利の場合は金利上昇を想定した収支計画を立てることが重要です。

さらに、借入金が多額の場合、相続人が返済を引き継ぐ負担が大きくなります。相続人の収入や資産状況も考慮して、無理のない借入額に抑えることが大切です。

税理士からは「相続税対策は生前から計画的に行う必要がある」との声が上がっています。借入金を活用する場合も、長期的な視点で計画を立て、専門家に相談しながら進めることが推奨されます。

他の相続税対策との組み合わせ

不動産を活用した相続税対策は、他の対策と組み合わせることでさらに効果を高めることができます。

第一に、生前贈与との組み合わせです。賃貸アパートを建てた後、その建物を子どもに贈与することで、将来の相続財産を減らせます。建物の評価額は固定資産税評価額で計算されるため、建築費よりも低くなり、贈与税の負担も軽くなります。

第二に、法人化との組み合わせです。賃貸経営を法人で行うことで、所得税の節税効果も得られます。また、法人の株式を少しずつ子どもに贈与することで、相続税対策にもなります。

第三に、生命保険との組み合わせです。賃貸経営で得た家賃収入を保険料に充て、生命保険に加入することで、死亡保険金を相続税の納税資金に活用できます。

第四に、養子縁組との組み合わせです。養子を迎えることで法定相続人が増え、基礎控除額が増加します。さらに、養子に賃貸不動産を相続させることで、貸付事業用宅地等の特例を適用できます。

第五に、小規模宅地等の特例(居住用)との併用です。自宅用の土地と賃貸用の土地の両方がある場合、それぞれに特例を適用することで、より大きな節税効果が得られます。ただし、限度面積の調整が必要なため、税理士に相談して最適な組み合わせを選びます。

これらの対策を組み合わせることで、相続税を大幅に減らすことが可能です。ただし、複雑な計算や手続きが必要なため、必ず税理士などの専門家に相談してください。

よくある質問

Q1. 相続直前に賃貸アパートを建てても相続税対策になりますか?

貸家建付地や貸家としての評価減は、相続時に賃貸経営を行っていれば適用されます。ただし、貸付事業用宅地等の特例を使うには、相続開始前3年以上継続して貸付事業を行っている必要があります。また、相続直前の対策は税務署から否認される可能性もあるため、できるだけ早めに開始することが推奨されます。

Q2. 賃貸割合が低い場合、評価額はどうなりますか?

貸家建付地の評価額は、賃貸割合に応じて計算されます。例えば、全10室のアパートのうち5室が空室の場合、賃貸割合は50%となり、評価減の効果も半減します。相続時点で空室が多いと節税効果が薄れるため、できるだけ満室に近い状態を維持することが重要です。

Q3. 既存の建物を賃貸に出しても相続税対策になりますか?

はい、既存の建物を賃貸に出すことでも貸家として評価され、評価額が約30%減額されます。土地も貸家建付地として評価されるため、約18%から21%減額されます。新たにアパートを建てなくても、現在の自宅の一部を賃貸に出すだけでも相続税対策になります。ただし、一定の要件を満たす必要があるため、税理士に相談してください。

まとめ

不動産を賃貸経営に活用することで、相続税評価額を大幅に下げることができます。2025年の地価高騰が続く中、貸家建付地と貸家の評価減により、数百万円から数千万円の節税効果が期待できます。

貸家建付地として土地の評価額は約18%から21%減額され、貸家として建物の評価額は約30%減額されます。さらに貸付事業用宅地等の特例を併用すれば、200平方メートルまで50%減額され、より大きな節税効果が得られます。

ただし、賃貸経営には空室リスク、建築費の負担、修繕費などのリスクもあります。立地選び、適切な家賃設定、長期的な収支計画が成功の鍵です。相続税対策は生前から計画的に行う必要があるため、早めに税理士や不動産専門家に相談して、最適なプランを立てましょう。

  • URLをコピーしました!