相続税 小規模宅地特例 適用条件|80%減額で節税する方法

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相続税路線価が4年連続で上昇し続ける中、相続税の負担を大幅に軽減できる「小規模宅地等の特例」への関心が高まっています。この特例を適用すれば、居住用宅地については330平方メートルまで評価額を80%減額できるため、数百万円から数千万円の節税効果が期待できます。しかし、適用には厳格な要件があり、知らずに要件を満たさないと特例が使えません。本記事では、小規模宅地等の特例の適用条件、具体的な節税効果、申請時の注意点について詳しく解説します。

小規模宅地等の特例とは何か

小規模宅地等の特例は、相続税の計算において一定の条件を満たす宅地の評価額を大幅に減額できる制度です。2025年現在も多くの相続税対策で活用されています。

この特例の目的は、被相続人が居住していた土地や事業を行っていた土地について、相続人が引き続き居住や事業を継続できるよう、相続税の負担を軽減することにあります。

特例には3つの類型があります。第一に、特定居住用宅地等(居住用の土地)で、330平方メートルまで80%減額されます。第二に、特定事業用宅地等(事業用の土地)で、400平方メートルまで80%減額されます。第三に、貸付事業用宅地等(賃貸用の土地)で、200平方メートルまで50%減額されます。

最も利用されるのが特定居住用宅地等の特例です。例えば、路線価が1平方メートルあたり100万円の土地300平方メートルを相続する場合、通常の評価額は3億円ですが、特例を適用すれば6000万円に減額されます。

📌 小規模宅地特例の要点

  • 居住用宅地は330平方メートルまで80%減額
  • 事業用宅地は400平方メートルまで80%減額
  • 賃貸用宅地は200平方メートルまで50%減額
  • 適用には相続人の継続居住や事業継続が条件
  • 複数の宅地がある場合は組み合わせも可能

特定居住用宅地等の適用条件

特定居住用宅地等の特例を受けるには、相続人が以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

第一に、配偶者が相続する場合は無条件で適用されます。配偶者は被相続人と同居していたかどうかにかかわらず、特例を使うことができます。

第二に、被相続人と同居していた親族が相続する場合です。この場合、相続税の申告期限(相続開始から10か月)まで引き続きその家に住み続け、かつその宅地を所有し続ける必要があります。

第三に、被相続人と同居していなかった親族(別居親族)が相続する場合です。ただし、この場合は「家なき子特例」と呼ばれる厳格な要件を満たす必要があります。具体的には、相続開始前3年以内に自己または配偶者の持ち家に住んでいないこと、相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有したことがないことなどの条件があります。

2025年現在、家なき子特例の要件は厳格化されており、賃貸住宅に住んでいても、その賃貸住宅を親族が所有している場合などは適用されません。

また、二世帯住宅の場合は、建物の構造によって適用の可否が変わります。内部で行き来できる構造であれば同居とみなされますが、完全に独立した構造の場合は同居と認められない可能性があります。

具体的な節税効果のシミュレーション

小規模宅地等の特例による節税効果を具体的な数字で見てみましょう。

ケース1として、東京都心部で路線価1平方メートルあたり200万円、土地面積200平方メートルの自宅を配偶者と子ども1人で相続する場合を考えます。

特例なしの場合、土地の評価額は4億円です。基礎控除額は4200万円(3000万円+600万円×2人)なので、課税対象額は3億5800万円となり、相続税額は約1億円になります。

特例ありの場合、200平方メートル全体が80%減額されるため、評価額は8000万円に下がります。課税対象額は3800万円となり、相続税額は約500万円です。節税効果は約9500万円に達します。

ケース2として、千葉県市川市で路線価1平方メートルあたり101万円、土地面積300平方メートルの自宅を子ども2人で相続する場合を考えます。

特例なしの場合、土地の評価額は3億300万円です。基礎控除額は4200万円なので、課税対象額は2億6100万円となり、相続税額は約7000万円になります。

特例ありの場合、300平方メートル全体が80%減額されるため、評価額は6060万円に下がります。課税対象額は1860万円となり、相続税額は約200万円です。節税効果は約6800万円に達します。

このように、小規模宅地等の特例は相続税を大幅に減額できる強力な制度です。

特例適用時の注意点と失敗事例

小規模宅地等の特例は強力ですが、適用要件を満たさないと使えません。実際の失敗事例から注意点を見ていきます。

失敗事例1として、同居していた子どもが相続後すぐに引っ越してしまったケースがあります。特例の適用には、相続税の申告期限(10か月)まで継続して居住することが条件です。転勤などやむを得ない事情があっても、この要件を満たさないと特例は適用されません。

失敗事例2として、相続後すぐに土地を売却してしまったケースです。申告期限まで所有し続けることが要件なので、早期売却すると特例が使えません。

失敗事例3として、二世帯住宅で別々の登記をしていたケースです。建物が区分所有登記されている場合、同居とみなされない可能性が高く、特例が適用できません。

失敗事例4として、家なき子特例を使おうとしたが、親族名義の賃貸住宅に住んでいたケースです。2025年現在の要件では、親族が所有する家屋に住んでいる場合は家なき子特例が適用されません。

また、相続税の申告自体を忘れると特例は適用されません。相続税がかからない場合でも、特例を使う場合は必ず申告が必要です。

複数の宅地がある場合の選択方法

被相続人が複数の宅地を所有していた場合、どの宅地に特例を適用するかを選択できます。

基本的には、節税効果が最も大きくなるように選択します。評価額が高い土地に特例を適用した方が減額額は大きくなりますが、限度面積との関係も考慮する必要があります。

例えば、居住用宅地500平方メートルと事業用宅地200平方メートルを所有していた場合、居住用宅地については330平方メートルまでしか特例が適用されません。残りの170平方メートルには特例が適用されないため、その部分の評価額は満額で計算されます。

このような場合、事業用宅地にも特例を併用することができます。居住用宅地330平方メートルと事業用宅地200平方メートルの両方に特例を適用することが可能です。

ただし、貸付事業用宅地がある場合は計算が複雑になります。居住用と貸付用を併用する場合、限度面積の調整が必要になるため、税理士に相談することを強く推奨します。

また、相続人が複数いる場合、誰がどの宅地を相続するかによって特例の適用可否が変わります。適用要件を満たす相続人が取得するよう、遺産分割協議で調整することが重要です。

特例を最大限活用するための生前対策

小規模宅地等の特例を確実に使うためには、生前からの対策が重要です。

第一に、子どもとの同居を検討することです。被相続人と同居していた親族が相続する場合、特例の適用要件を満たしやすくなります。同居が難しい場合は、二世帯住宅を検討し、内部で行き来できる構造にすることで同居とみなされる可能性が高まります。

第二に、建物の登記方法に注意することです。二世帯住宅を建てる場合、区分所有登記ではなく単独所有または共有名義にすることで、特例が適用されやすくなります。

第三に、賃貸用不動産を持っている場合は、自宅用と賃貸用のバランスを考えることです。賃貸用宅地の減額率は50%なので、可能であれば居住用に転換することで節税効果が高まります。

第四に、配偶者に相続させる方法を検討することです。配偶者が相続すれば無条件で特例が適用されますが、配偶者の二次相続も考慮する必要があります。配偶者が高齢の場合、配偶者の相続時にも再度相続税が発生するため、一次相続と二次相続をトータルで考えた対策が必要です。

第五に、遺言書を作成して相続人を明確にすることです。遺産分割協議が長引くと申告期限に間に合わず、特例が適用できなくなる可能性があります。

専門家への相談タイミングと費用

小規模宅地等の特例は複雑な制度であり、適用要件の判断や計算には専門知識が必要です。税理士への相談が推奨されます。

相談のタイミングは、できるだけ早い段階が望ましいです。被相続人が元気なうちに相談すれば、生前対策を含めた最適なプランを立てることができます。相続が発生してからでも相談は可能ですが、選択肢が限られます。

税理士への報酬は、相続財産の規模によって変わりますが、一般的に相続財産の0.5%から1%程度が目安です。相続財産が1億円の場合、税理士報酬は50万円から100万円程度になります。

ただし、小規模宅地等の特例を適用することで数百万円から数千万円の節税効果があることを考えれば、税理士報酬は十分に元が取れる投資と言えます。

税理士を選ぶ際は、相続税に強い税理士を選ぶことが重要です。すべての税理士が相続税に詳しいわけではないため、相続税の申告実績が豊富な税理士を選びましょう。

また、不動産鑑定士や司法書士、弁護士などと連携している税理士事務所であれば、土地の評価や登記、遺産分割協議など、相続に関わる様々な問題をワンストップで対応してもらえます。

よくある質問

Q1. 配偶者と子どもが共同で相続する場合、特例はどうなりますか?

配偶者と子どもが共同で相続する場合、それぞれが取得した宅地の持分に応じて特例を適用できます。例えば、配偶者が50%、子どもが50%取得した場合、両者の持分それぞれに特例が適用されます。配偶者は無条件で適用されますが、子どもは同居要件などを満たす必要があります。

Q2. 相続税の申告をしないと特例は使えませんか?

小規模宅地等の特例を適用するには、必ず相続税の申告が必要です。特例を適用した結果、相続税がゼロになる場合でも申告は必須です。申告しないと特例が認められず、後から修正申告をしても原則として適用されません。申告期限は相続開始から10か月以内です。

Q3. マンションの場合でも特例は適用されますか?

マンションの場合でも小規模宅地等の特例は適用されます。マンションは土地と建物の両方を所有する区分所有権ですが、土地部分(敷地権)について特例が適用できます。ただし、限度面積の330平方メートルは敷地権の面積で判断されるため、一般的なマンションでは全体が特例の対象となります。

まとめ

小規模宅地等の特例は、居住用宅地330平方メートルまで評価額を80%減額できる強力な相続税対策です。2025年の地価高騰が続く中、この特例を活用することで数百万円から数千万円の節税効果が期待できます。

特例の適用には、配偶者が相続する場合は無条件ですが、子どもが相続する場合は同居要件や継続居住要件を満たす必要があります。相続後10か月まで住み続け、所有し続けることが条件です。

特例を確実に使うためには、生前からの対策が重要です。子どもとの同居、建物の登記方法、遺言書の作成など、早めに税理士に相談して最適なプランを立てましょう。特例の申告には必ず相続税申告が必要なので忘れずに手続きを行ってください。

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