放置柿が招く深刻なクマ被害と命がけ収穫の実態

事案概要

秋田県能代市では、放置された柿がクマの出没増加を招く要因として問題視されています。管理できない果樹が増え、人里に残された柿を求めてクマが降りてくる構図が定着しつつあります。この問題に対し、地元の男性が危険を承知で放置柿を収穫し、その売上を獣害対策に充てる取り組みを続けています。

発端と経緯

この男性が収穫活動を始めたのは2022年頃。地域では以前からクマの目撃情報があったものの、負傷者が出るほどではありませんでした。しかし近年、行動が変化したクマが人里への出没を繰り返し、今年に入って住民が背後から襲われる事件が発生。数針を縫うけがを負い、「安全な地域」という前提は大きく崩れました。

現場で起きている危険

収穫現場にはクマのフンが大量に残され、クマが木の実を食べる際に作る「クマ棚」も多数確認されます。男性自身は直接遭遇したことはないものの、背後を取られる危険性を避けるため車を背にして作業し、爆竹や大音量スピーカーでの警戒を欠かしません。まさに“命がけ”の状況での収穫作業が続いています。

放置柿問題と高齢化

放置柿の増加は、地域の高齢化と過疎化が背景にあります。収穫しきれない果樹が増え、自治体が「食べなくても良いのでとにかく収穫してほしい」と呼びかけるほどの事態となっています。クマにとって柿は高カロリーの好物であり、木に実が残っていれば人里まで誘引される確率が高まるため、放置柿は獣害を拡大させる大きな要因となっています。

命がけの収穫と安全対策

男性はクマ避けとして爆竹、音楽、クマ除けスプレーを常に携帯し、「背中を見せない」「車を盾にする」といった独自の工夫を凝らしています。地域住民向けの収穫体験イベントはクマの出没増加により中止となり、今年から本格展開する予定だった県外観光客向けプログラムも安全確保が困難なため見送られました。

不作・鳥害・伐採による収穫量減少

今年は柿の生育が不作傾向にあり、実が小ぶりで色づきも早かったため鳥による食害が増えました。さらにクマ対策として木の伐採が進んだことで、収穫量は例年よりも大幅に減少。活動を維持するための販売量確保が難しくなっています。

売上をクマ対策に充てる取り組み

男性は収穫した柿や、それを加工したスイーツ・ドリンクなどをネットやキッチンカーで販売。その売上は道具代、燃料費、広報ポスター製作などのクマ対策費用に充当され、これまでに700万円以上が投入されています。収穫作業は無償で行っており、活動は“持ち出し”に近い状態が続いていますが、地域の安全を守るために継続しています。

背景にある社会的リスク

全国的にクマ出没が増えていますが、その背景には餌不足や環境変化、人里の果樹の増加などが複雑に絡み合っています。本来は人を避ける習性のあるクマが今年は攻撃的な行動を見せるケースもあり、地域の安全管理の前提が揺らぎつつあります。能代市では「これまで出没がなかった場所」にまでクマ棚が確認され、危険範囲が拡大しています。

SNSの反応

SNSでは「本当に命がけの活動」「絶対に気をつけてほしい」「農家は恐怖と戦いながら生活を守っている」「売上がクマ対策に使われるなら応援したい」など、多くの共感と励ましの声が寄せられています。販売されている柿は“自然そのままの味”として好評で、活動への支援の輪も徐々に広がっています。

今後の見通しと地域課題

収穫量の安定化、燃料費高騰、作業の安全確保など課題は山積しています。しかし、放置果樹の増加は地域構造の問題であり、個人の努力だけでは限界があります。行政の支援や地域ぐるみの対策が不可欠で、男性の取り組みは「個人発の獣害対策モデル」として注目を集める可能性があります。