米在庫過剰が農家経営を圧迫！2025年端境期までの販売リスクと品質劣化の実態

在庫過剰の実態と規模

2025年11月末時点で、全国の米農家が抱える在庫は例年を大きく上回っている。新潟県南魚沼地域では、通常この時期には既に新米の7割程度が販売されているが、2025年は5割程度にとどまっている。

フエキ農園の場合、20ヘクタールの水田から収穫した米のうち、約半分が未販売のまま倉庫に保管されている。同業者も同様の状況で、地域全体で在庫過剰が深刻化している。通常であれば年末商戦で在庫が一掃されるが、2025年は消費者の反応が鈍い。

在庫問題の時系列推移

在庫問題は新米の販売開始直後から顕在化していた。10月中旬、フエキ農園がふるさと納税サイトで受注を開始したが、前年のような注文殺到はなかった。直販サイトでも、例年より注文ペースが遅い状況が続いた。

11月に入ると、年末商戦に向けた動きが本格化するが、2025年は消費者の反応が鈍かった。スーパーでの販促キャンペーンも効果が限定的で、高価格帯の米は棚に残り続けた。

11月末時点で、農家の間では「このペースでは端境期までに売り切れない」という危機感が広がっている。特に直販比率の高い農家ほど、在庫リスクに対する不安が強い。

端境期と品質劣化のメカニズム

端境期とは、前年産米の在庫が尽き、新米が出回るまでの期間を指し、通常6月から8月を指す。この時期は気温と湿度が上昇し、米の品質劣化が加速する。

米の品質劣化は主に3つの要素で進行する。第一に、デンプンの老化による食味の低下だ。精米後数カ月で老化が始まり、炊き上がりの粘りや香りが失われる。第二に、脂質の酸化による変色と臭いの発生だ。高温多湿環境では酸化が急速に進む。

第三に、虫害とカビの発生リスクだ。特に6月から8月は米びつに虫が発生しやすく、商品価値が完全に失われる。端境期を過ぎた米は、たとえ未開封でも品質保証が困難になる。

農家と流通業者のSNS反応

SNS上では、農家の不安と焦りが如実に表れている。「倉庫が米で埋まっているが、どう処分すればいいのか」「端境期までに売り切る自信がない」という投稿が相次いでいる。

フエキ農園の笛木さんのような声は、決して特殊ではない。「昨年は米が品薄だったから、お客さんには切迫感があったのでしょう。今年は米不足感がないですから、高すぎる米は売れない」という分析は、多くの農家に共有されている。

流通業者からも「農家の在庫処分を手伝いたいが、小売価格を下げても消費者の反応が鈍い」という声が上がる。市場全体が在庫過剰に陥っており、通常の販促手法では解決困難な状況だ。

在庫管理の専門家見解

農産物の在庫管理に詳しい専門家は、今回の事態を「価格設定の失敗による典型的な過剰在庫」と分析する。需要予測を誤り、供給量の調整ができなかった結果、市場に過剰在庫が発生した。

専門家は農家に対し、「価格へのこだわりを捨て、早期の在庫処分を優先すべき」とアドバイスする。端境期を過ぎれば品質劣化により商品価値が大きく下落するため、多少の値引きでも早期販売の方が経済的に合理的だ。

また、「来年以降は作付面積の調整も視野に入れるべき」との指摘もある。市場の需要を超える生産は、恒常的な在庫リスクを生む。需要に見合った生産計画への転換が求められる。

過去の在庫過剰事例との比較

米の在庫過剰は、過去にも繰り返されてきた。1995年のコメ輸入自由化直後、国産米の過剰在庫が深刻化し、多くの農家が損失を計上した。この時は政府の買い入れ制度で一部が救済されたが、制度は2004年に廃止された。

2010年の豊作時にも在庫過剰が発生した。この時は農協が在庫を引き取り、飼料用米や加工用米として処分したが、農家の収入は大幅に減少した。通常の食用米価格の半分以下での処分となった。

今回の特徴は、豊作ではなく価格高騰による需要減退が原因である点だ。供給量は通常レベルだが、価格が需要を抑制している。過去のような政府介入や農協の救済措置は期待できず、農家は自力での在庫処分を迫られている。

農家が取るべき在庫処分戦略

在庫過剰に直面する農家は、段階的な価格戦略を検討すべきだ。第一段階として、12月から1月の年末年始商戦で、一定の値引きを行う。この時期を逃すと、次の販売ピークは端境期直前まで来ない。

第二段階として、2月から4月にかけて、さらなる値引きと販路拡大を並行して進める。業務用米としての販売、学校給食への納入、加工用米への転用など、あらゆる選択肢を検討する必要がある。

よくある質問

まとめ