政府が外国人の日本国籍取得に関する居住期間の要件を、現行の「5年以上」から「10年以上」に事実上引き上げる方向で調整を進めています。永住許可よりも国籍取得の方が緩やかな要件になっている「逆転現象」を問題視する声が政府・与党内から上がっていたことが背景にあります。1月にまとめられる外国人政策の基本方針に盛り込まれる見通しですが、なぜこのタイミングで厳格化が進められるのでしょうか。日本で生活する外国人や、将来的に国籍取得を検討している方々にとって大きな影響を及ぼすこの政策変更について、あなたも疑問に思ったことはありませんか?
📌 この記事の要点
- 政府が外国人の日本国籍取得要件を厳格化する方針
- 居住期間の要件を現行「5年以上」から「10年以上」に引き上げ
- 永住許可(原則10年以上)との整合性を図ることが目的
- 国籍法の規定は変更せず、運用で対応する方向
- 2025年1月の外国人政策基本方針に盛り込む見通し
1. 国籍取得厳格化の概要|何が変わるのか
12月4日、政府・与党関係者が明らかにした情報によると、政府は外国人による日本国籍取得に関する居住期間の要件を、現行の「5年以上」から「10年以上」に事実上引き上げる調整に入りました。
この方針は同日の自民党会合で政府側から示されたもので、来年1月にまとめる外国人政策の基本方針に盛り込まれる方向です。重要な点は、国籍法そのものの「5年以上」という規定は変更せず、運用として取得を認める居住期間を10年以上に引き上げるという手法がとられることです。
現在、日本国籍取得には居住要件のほかにも「素行が善良であること」「本人や配偶者などの資産や技能で安定した生活を送ることができる」など複数の要件があり、最終判断は法務大臣の裁量による部分が大きいとされています。今回の厳格化は、この裁量運用の基準を変更する形で実施される見込みです。
2. 厳格化の背景・原因|なぜ今見直されるのか
今回の国籍取得要件厳格化の最大の背景は、永住許可との「逆転現象」が問題視されたことにあります。
日本では永住許可を得るためには原則として10年以上の居住が求められます。一方で、より重い法的地位である日本国籍の取得については、居住期間が5年以上と永住許可よりも短い期間で申請可能でした。この状況について、政府・与党内から「永住許可よりも国籍取得の方が居住要件が緩やかなのはおかしい」との指摘が上がっていました。
特に日本維新の会が9月に公表した外国人政策の提言では、「より重い法的地位である国籍の方が、永住許可よりも取得要件が緩いという逆転現象が生じている」と明確に指摘し、国籍取得申請の厳格化を求めていました。
また、この検討は石破茂首相時代に始まり、高市早苗首相のもとで具体化が進んでいます。外国人政策全体の見直しの一環として、制度の整合性を図る動きが加速していると見られます。
3. 関係者の動向・コメント
外国人政策に関する関係閣僚会議では、高市早苗首相と小野田紀美外国人共生担当相が中心となって議論を進めています。初会合では、外国人政策全体の方向性について協議が行われました。
与党関係者は今回の方針について「永住許可との整合性を図る意味で、居住期間の要件を延長する必要がある」と強調しています。政府側は、法改正ではなく運用変更という手法を選ぶことで、比較的迅速に制度変更を実現できると判断したものと見られます。
一方で、国籍取得には永住許可申請には求められていない「日常生活に支障がない程度の日本語能力」も必要とされており、「要件を総合して考えると国籍取得の要件が緩やかだとは一概には言えない」との指摘も存在します。
4. 影響を受ける人数・範囲
現時点で具体的な影響を受ける人数は明らかになっていませんが、日本で生活する外国人のうち、国籍取得を検討している層に大きな影響が及ぶことは確実です。
法務省の統計によれば、近年の帰化許可者数は年間約8,000人から10,000人程度で推移しています。今回の要件厳格化により、これまで5年以上の居住で国籍取得を申請できた外国人が、さらに5年間待たなければならなくなるケースが増えることになります。
特に影響を受けるのは、留学や就労で日本に来て5〜10年程度の滞在期間がある外国人です。これまでであれば国籍取得を検討できた層が、今後は10年以上の居住実績を積む必要が生じます。
ただし、日本人配偶者や日本で生まれた子どもなど、特別な事情がある場合の簡易帰化については、今回の運用変更がどの程度影響するかは現時点では不明です。
5. 政府・行政の対応方針
政府は1月に外国人政策の基本方針をまとめる予定で、その中に今回の国籍取得要件厳格化を盛り込む方向で調整を進めています。
実施にあたっては、国籍法の条文改正は行わず、法務省の運用指針を変更するという手法が採られる見込みです。これにより、国会での法改正手続きを経ずに、比較的早期の実施が可能になります。
外国人政策に関する関係閣僚会議では、国籍取得要件の厳格化だけでなく、外国人受け入れ政策全体の見直しが進められています。技能実習制度の改革や特定技能制度の拡充、永住許可制度の見直しなど、包括的な政策パッケージの一環として位置づけられています。
法務省は今後、新たな運用基準の詳細を詰めた上で、全国の法務局・地方法務局に通達を出し、運用開始を目指すものと見られます。
6. 専門家の見解や分析
移民政策に詳しい専門家からは、今回の厳格化について賛否両論の声が上がっています。
賛成派の見解としては、「永住許可と国籍取得の要件に整合性を持たせることは、制度の公平性や透明性の観点から合理的」という意見があります。また、「国籍取得は国家の主権に関わる重要な事項であり、慎重な審査が求められる」として、一定の居住期間を設けることの必要性を指摘する声もあります。
一方、慎重派からは「日本は少子高齢化が進む中で、優秀な外国人材を受け入れ、定着させることが国力維持のために不可欠。国籍取得のハードルを上げることは、長期的には日本にとってマイナスになる可能性がある」との懸念が示されています。
また、法律の専門家からは「国籍法の条文を変えずに運用だけで実質的な要件を変更することは、法の安定性や予測可能性の観点から問題がある」との指摘も出ています。法改正を経ずに大きな制度変更を行うことの是非については、今後も議論が続くと見られます。
7. SNS・世間の反応
インターネット上やSNSでは、この政策発表に対してさまざまな反応が見られます。
「永住許可よりも国籍取得の方が簡単というのは確かにおかしい。整合性を図るのは当然」「国籍は国家の根幹に関わる問題。慎重に審査すべき」という賛成意見が一定数見られます。
一方で、「日本で長年働いて税金も納めている外国人に対して、さらにハードルを上げるのは厳しすぎる」「優秀な人材が日本を離れる原因になるのでは」「グローバル化の時代に逆行している」といった批判的な意見も多く投稿されています。
また、「そもそも永住許可の要件が厳しすぎるのが問題。国籍取得を厳しくするのではなく、永住許可を緩和すべき」という、別の視点からの意見も見られました。
当事者である在日外国人からは、「将来の計画が立てにくくなる」「日本への帰属意識を持っているのに、制度が厳しくなるのは残念」といった声が上がっています。
8. 今後の見通し・影響
2025年1月に外国人政策の基本方針が正式に決定された後、法務省が具体的な運用指針を策定し、新たな基準での運用が開始される見込みです。
今回の厳格化により、短期的には帰化許可者数の減少が予想されます。これまで5年程度の居住で国籍取得を申請していた層が、10年以上の居住を待つことになるためです。
中長期的な影響としては、日本への定住を考える外国人の選択肢に変化が生じる可能性があります。国籍取得を諦めて永住許可で留まる人が増えるか、あるいは国籍取得を目指す人にとっては滞在期間の長期化が必要になります。
また、今回の動きは外国人政策全体の見直しの一環であり、今後も技能実習制度の改革、特定技能制度の拡充、永住許可制度の見直しなど、関連する制度変更が続くと見られます。日本の外国人受け入れ政策は大きな転換期を迎えていると言えるでしょう。
国際的な人材獲得競争が激化する中で、日本の外国人政策がどのような方向に進むのか、引き続き注目が集まります。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. 国籍法は改正されるのですか?
A. いいえ、国籍法の条文そのものは変更されません。「5年以上」という規定は残りますが、法務省の運用指針が変更され、実質的に10年以上の居住が求められるようになる見込みです。
Q2. いつから新しい基準が適用されますか?
A. 1月に外国人政策の基本方針に盛り込まれた後、法務省が具体的な運用指針を策定します。
Q3. すでに申請中の人にも影響しますか?
A. 現時点では詳細が明らかになっていませんが、一般的に制度変更では既に申請済みのケースには旧基準が適用されることが多いです。ただし、正式な運用指針が出るまでは確定的なことは言えません。
Q4. 日本人配偶者の場合も10年必要になりますか?
A. 日本人の配偶者や日本で生まれた子どもなど、特別な事情がある場合の簡易帰化については、今回の運用変更がどの程度影響するかは現時点では不明です。今後の詳細な指針を待つ必要があります。
Q5. 永住許可と国籍取得の違いは何ですか?
A. 永住許可は外国籍のまま日本に永住できる資格です。一方、国籍取得(帰化)は日本国籍を得ることで、選挙権などの権利が得られますが、元の国籍を失う場合があります。法的地位としては国籍取得の方が重いとされています。
📝 まとめ
政府が外国人の日本国籍取得要件を厳格化する方針を打ち出しました。居住期間の要件を現行の「5年以上」から「10年以上」に引き上げることで、永住許可との整合性を図ることが目的です。
国籍法の条文は変更せず、運用での対応となる見込みで、1月の外国人政策基本方針に盛り込まれる予定です。この変更により、日本での長期滞在を前提とした外国人の人生設計に大きな影響が及ぶことになります。
賛否両論がある中、制度の公平性を重視する声と、人材流出を懸念する声が対立しています。少子高齢化が進む日本において、外国人との共生をどう進めていくのか、今後の政策動向から目が離せません。
国籍取得を検討している外国人の方は、今後の正式な運用指針の発表を注視し、早めに専門家への相談を検討することをおすすめします。
